それでもあなたに恋をする
「沖さん、黙っていて悪かったね。」
そう言って、常務は困った様に眉を下げて微笑んだ。
「今日はね、山口君の歓迎会よ。でも、それだけじゃないの。私達の入籍祝いと、貴女の勤続10周年と誕生日祝いも兼ねてるのよ。」
「…え?」
「すみません黙っていて。社長と常務に口止めされていたので。」
山口君も、申し訳無さそうに微笑む。
「雅を驚かせたくて、私が口止めしたのよ。でも、この会を考えてくれたのは山口君で、ここにあるデリバリーの数々も全部手配してくれたの。」
「全部、貴方が?」
「はい。社長と常務…そして、課長の為ですから。」
にっこり微笑む山口君。
彼だって、毎日仕事に終われて大変だったのに。
決して根を上げず、いつだって新人とは思えない働きを見せてくれて。
当たり前の様に社長と常務が帰宅するまで働いていた。
それなのに、こんなプライベートな事までしてくれるなんて。