それでもあなたに恋をする
「――先輩、常務、ありがとうございます。こんなに嬉しいサプライズなら大歓迎です。それから、山口君もありがとう。」
感極まって涙が浮かぶけど、溢れそうになるのを必死で堪える。
今はプライベートな時間とはいえ、山口君にとって私は上司だし、涙なんて見せられない。
「ウフフ、雅が喜んでくれて良かった。帰りは山口君が送ってくれるから、今日は飲んで大丈夫よ。」
先輩はそう言いながらワインを開けてグラスに注ぐ。
「…社長、僕は」
4つ並んだグラスを見て、山口君は慌てて声をかけるけど
「大丈夫、分かってるわよ。大事な雅を送って貰うんだから、飲ませるつもりはないわ。ただ、乾杯したいから、とりあえず形だけね?」
「山口君、飲めないのは分かっているから安心してくれ。君の為にソフトドリンクも用意してあるから。」
楽しそうに早口で捲し立てる先輩と、それをフォローする常務。
仕事の時と同じだと思った。
わりと自由奔放な先輩のフォローをしっかり行う常務。
お二人はいいパートナーだと思う。
「――それでは、山口君の歓迎と、雅の誕生日、私達の結婚に――」
「「「「乾杯!」」」」