それでもあなたに恋をする
――カチン!
ワイングラスのいい音が響いた。
他愛のない会話と、美味しい料理。
それから、誕生日プレゼントまで頂いて嬉しくて仕方なかった。
飲めない山口君は、その代わりといわんばかりに次々料理を平らげていく。
「…ねぇ、そんなに食べて大丈夫?」
「勿論です。僕は若いですから。」
意地悪く微笑む山口君。
いつもならイラつく台詞だけど、唇の端についたトマトソースが可愛くて――。
言い返すのは止めておいた。
先輩と常務はとても幸せそうで、お酒が入るごとに見つめ合う回数が増えていき、見てる私が恥ずかしくなる位だった。
でも、そんな先輩が女として羨ましかった。
本命にもして貰えない彼とは最近会っていないし、今の私は愛情不足。
だから、山口君の言動がいちいち気になるのかもしれない。
「先輩、常務、そろそろ失礼します。」
お二人は楽しそうに飲み続けていたし、全く飲まない山口君をこれ以上付き合わせるのは気が引けて、挨拶も早々に済ませマンションを後にした。