それでもあなたに恋をする
「風が気持ちいいわ。」
アルコールで火照った身体を夜風はいい感じに冷ましてくれる。
これから彼と二人きりになって、車で送って貰うなんて。
今の私にはちょっと危険すぎる行為だから。
乗り込む前にアルコールを抜いて、いつもの上司の顔を取り戻す。
「課長、どうぞ。」
女としての私の顔なんて全く気付かない山口君は、助手席のドアを開けてエスコートしてくれる。
「ありがとう」
スマートに当たり前のように受け流し、心の中では”慣れてるなぁ”なんてため息をつく。
きっとこの助手席にかわいい彼女でも乗せているに違いない。
山口君が結婚する時には、私は乾杯の挨拶でも頼まれたりするのかしら?
社会人生活が長いと、ついつい現実的な事を想像してしまう。
悲しい位年を重ねた証拠だと自覚しているけど。