それでもあなたに恋をする


「風が気持ちいいわ。」




アルコールで火照った身体を夜風はいい感じに冷ましてくれる。



これから彼と二人きりになって、車で送って貰うなんて。

今の私にはちょっと危険すぎる行為だから。


乗り込む前にアルコールを抜いて、いつもの上司の顔を取り戻す。




「課長、どうぞ。」



女としての私の顔なんて全く気付かない山口君は、助手席のドアを開けてエスコートしてくれる。




「ありがとう」



スマートに当たり前のように受け流し、心の中では”慣れてるなぁ”なんてため息をつく。


きっとこの助手席にかわいい彼女でも乗せているに違いない。



山口君が結婚する時には、私は乾杯の挨拶でも頼まれたりするのかしら?


社会人生活が長いと、ついつい現実的な事を想像してしまう。



悲しい位年を重ねた証拠だと自覚しているけど。




< 35 / 62 >

この作品をシェア

pagetop