それでもあなたに恋をする
何気ない会話を交わしながら、山口君の方は見れないでいる。
窓の外の流れ行く景色に目を向けながら、でも、ネオンの明かりもビルの明かりも、幾重にも重なって綺麗なはずなのに、私の頭には入って来ない。
年甲斐もなく年下の、まして部下が気になるなんて・・・
重症なくらい愛情不足なんだ。
山口君には気付かれないようにため息をつく。
自分で自分が嫌になる位、女としての私が根を上げている。
愛情が足りないって。
「課長、明日は休みで良かったですね?」
「え?」
不意に投げかけられた言葉に頭がついていかない。
車はちょうど赤信号で停車していて、山口君はとびきりの笑顔で助手席に座る私をみている。
「かなり酔っているように見受けられますよ?」
意地悪い台詞のはずなのに、その笑顔が優しさで溢れているように見えるのは、酔っているからなの?
「・・・そうね。」
ポーカーフェイスを装い、また、窓の外に目を向ける。
あと10分もすれば私のマンションについてしまう。
早くついて欲しい気持ちと、もう少しこのままでいたい気持ちと、複雑。