それでもあなたに恋をする
持てる理性を総動員して冷静な口調で答える。
「大丈夫よ、転んだりしないわ。」
大人の女性は、年下の部下に素直に甘える事なんてしないの。
可愛げの無い隙の無い女性像をこうやって自分で作り上げては、寂しさに押しつぶされそうになる。
「送ってくれてありがとう。お休みなさい。」
余裕たっぷりの笑顔でアルコールが抜けている事を必死にアピールして、今度こそ振り返らずにマンションへと入っていく。
「・・・ふぅ。」
エレベーターのボタンを押したと同時に零れ落ちるため息。
私は一体どうしたいのだろう。
部下である彼に、何かを求めているの?
それとも、全く連絡の無い彼氏の代わりを探しているだけなの?
自分でも理解できないもやもやが心を支配して。
この年になってこれ以上幸せを逃がしたくないのに、ため息ばかりが出てしまう。