それでもあなたに恋をする
「雅、もしかして彼氏にばれた?」
拒否されたのは初めてだから、動揺を隠せないのだろう。
彼は必死に優しく話しかけてきて。
「それとも、俺の彼女から連絡とかあった?」
「え?」
思ってもみない台詞に驚き、思わず顔を上げてしまった。
「いや、色々浮気がばれてさ。彼女怒り狂ってて大変なんだ。雅の所ならばれてないかと思ってたんだけど・・・」
頭をぽりぽりとかきながら必死に説明する彼が、馬鹿みたいに醜く見えて。
彼は三十代後半で、いつも冷静な大人の余裕が感じられる人だった。
引き締まった身体はとても綺麗で、私を抱く時の逞しい腕にいつも見とれていた。
仕事も出来て優秀で、会社の社長令嬢に気に入られたらしく、その彼女と結婚の約束をしていて。
でも、雅といた方が落ち着くなんて言いながら私の部屋に転がり込んで来ていた。
しどろもどろになりながら言い訳を繰り返す彼を、ぼーっとしながら眺めていた。
私は、この人の何がよかったのだろう?
私以外にも浮気相手が沢山いたなんて、気付きもしなかった。
呆れるくらい見る目が無かった事を感じながらも、何故か笑えてきた。