【短編】12年の想い
落ち着いてから山村くんの胸から離れて


「ありがと。ほんまいきなり泣いてゴメンな。」

謝ると山村くんは笑顔で


「ええって。気にすんな。黒田も溜め込んだらあかんで。」

そう言ってわたしの肩を抱いて部屋の方へ歩いて行った。

メイク、崩れてへんよな??

とかそんなこと考えとった。

そしたら幻覚が。

お酒のせいや。

飲みすぎたんかな・・・。

でもこんな幻覚見れるんやったらお酒もっと飲もうかな。

そう思ったときやった。


「千代子!!」

名前を呼ばれた。

こんな幻覚リアルやなぁ。

でも本物は”チョコ”って呼ぶもんな。

わたしの理想の幻覚や。


その瞬間幻覚がわたしの手を引いて山村くんからわたしを引き離した。

へ?

本物??

幻覚言うのはもちろん亮ちゃん。


「ちょっと来い!!」

そう言ってわたしの手を引いて亮ちゃんは歩いて行く。


「り、亮ちゃん!?本物なん!?」

そう言うと立ち止まってわたしの両肩を掴んだ。

「どこに俺の偽物がおるんか。」

そう言って笑った。


この笑顔、本物や。

この声、本物や。


顔見た瞬間わたしはまたグズッてしまって泣きながら亮ちゃんにしがみ付いた。


「諦めるなんて無理や・・・。亮ちゃんが好きすぎて・・無理や。」

そう抱きついた。
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