【短編】12年の想い
「黒田さん、ほんま無理なん??」


今日で何人目やねん。

わたしはずっと決めとんねん。


「好きな人、おるから。」


卒業式が終わると、声をかけられとった。

今時卒業式の日に告白ってないやろ。


古い4階建ての校舎。

音響ももうよくないけど毎日スピーカーからチャイムを聞いとった。

進学しないわたしはもう、チャイムなんて聞くことなんてないんやろうな。



「チョコ~、また告白されたん??あれ3組の吉本やん。」

3年間ずっと一緒におった桜子が冷やかすような目で言ってきた。

桜子、最後の最後まで千代子やなく、チョコて呼びよった。

殆どがわたしのことチョコって言う。

呼びやすいししょうがないんやけど・・・。

「そうなん?知らんわ。」

「ひどいなー、チョコは。ま、一途ってことでええと思うけどな。最後まで貫いたな、ほんま。すごいわ。」


こんな風に褒めてくれる桜子は1年のときからずっと彼氏がおってその彼氏がもうすぐ迎えに来てくれるらしい。

彼氏は今大学2年生らしいから。

わたしといえば・・・。


「あ、あれチョコのお兄ちゃんの車やない・・・??」


「ほんまや・・・。しかもあんなとこに・・・目立つ・・・」


校門の前に停められたハマーの四駆。

みんながジロジロ見てる。

まぁ、当の本人は見せびらかすために校門の前にわざと停めとるんやろうけど。

魂胆が見え見えやねん、ドアホが。


「恥ずかしいし、わたし行くわ。あさってのクラス会でな!!」


「うん、またなー。」


そう言ってわたしは校門まで30メートルくらい走った。

所々で写真を撮ってる人がいたのを尻目に。
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