【短編】12年の想い
そう言うとチョコは何も言わず部屋を飛び出した。

追っかけようと俺は立ち上がった。


でも・・・・約束した。

話せばきっとわかってくれる。

でも・・子どもを堕胎させたという事実をチョコに知ってほしくない。

きっと幻滅もする。

行ったところで好きやって言うことやって出来ん。


俺は何も出来んダメな奴や。

好きな子なのに妹やって嘘ついて、泣かせて、傷つけて・・・。

ほんまは今すぐ追っかけて抱きしめて好きやって言いたい。

ずっと心は一方通行やって思っとったやろうな、チョコも。

違ったんやって教えてあげたい。


でも無理や。

無力や、俺は。

今のチョコには何もしてあげれへん。


よく見たらチョコのバッグが置きっ放しだった。

アイツ、カラオケ行くって言うてへんかったか!?

そう思って家に行った。

相変わらず羨ましいほどカッコイイ車がある。

ベルを鳴らすと健治が出てきた。


「チョコは?」


「チョコ?さぁ。どっか行ってそのままやで?どうかしたん??」


そう言う健治に見つからないよう、俺はバッグを無意識に健治に見えない位置に隠しとった。


「いや、ちょっと用あったけどええわ。じゃ。」


そう言って健治に悟られないよう、ゆっくり家を出た。

ほんまは走って探しに行きたいくらいやけど・・悟られたら終わりやし。


カラオケって言うとったな??

チョコの学校の近くのカラオケ、4件行った。

男女でおるのはたくさん見たけどチョコはおらん。

何人か補導されとってチョコがかなり心配になってきた。

それもあるけど・・変な男に自暴自棄になったりせんやろうなって考えもあったし。


チョコを探しまくったけど・・見つからんかった。

携帯に何度かけても電源が入っとらんかった。

何のための携帯やねん!!

10時になった頃、近所に戻ってきたけどチョコの部屋はまだ電気が消えとる。

帰ってへんって物語っとった。
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