【短編】12年の想い
部屋の前。

前にここで聞いた。

亮ちゃんとお兄ちゃんが話してること。

わたしが中学2年のときやった。

亮ちゃんは高校3年、お兄ちゃんは高校2年。


「亮くんはどんな女がタイプなん??」


亮ちゃんへの片思い歴が長いわたしは聞き耳立てて聞いた。

でも聞こえてきた言葉はわたしには絶望に近かった。


「俺は、大人な女がタイプかな。」


それは4つ下のわたしとは真逆。

諦めようと思った。

幸いなことにわたしは容姿に長けていてモテるという学校生活やった。

好きやって言うてくれる人やっておったし、諦めてしまおうかて散々悩んだ。

でも、亮ちゃんを見るたびにその気持ちはその時消えとるんや。

亮ちゃんとおったらどんなに考えとったって好きやって思ってしまう。

だからわたしは大人の女になろう決めた。


雑誌はもちろん高校生が見るのやない。

大学生とかが見るようなお姉系。

それに合わせて服装も勉強した。

メイクやってギャルっぽいのは絶対せんやった。

でも大人になろう決めても亮ちゃんに抱きつくってことだけは辞めれんかった。

だって、好きやから触れてたいもん。

だからいつまでたっても妹なんやろうな。


部屋は亮ちゃんの香り。

タバコとお香と香水のまざった香り。

これがわたしの1番の安定剤って亮ちゃん知らんやろうな。


「昨日負けたし、今日もマリオカートでリベンジや。」

負けず嫌いなわたしが言うと亮ちゃんはニヤリと笑って

「100年早いわ。」


と言ってコントローラーをくれた。

ちょっと触れた指先。

熱くなるのが自分でもわかった。
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