【短編】12年の想い
亮ちゃんはこっちを振り向き、いつものような笑顔で


「秘密や、秘密。」


そう言ってまたわたしの横に座った。


秘密=恋人。

直感的にそう思った。

恥ずかしいんやって。

胸がギュウって締め付けられた。

ショックという感情に。


「そっか♪亮ちゃんモテそうやもんね。自慢のお兄ちゃんや。」

そう言ってニコッと笑った。

変な汗をかきそうやった。

何で?

胸が痛いから??

この場から離れたいって初めて思った。

いつもなら亮ちゃんの家から帰りたくないって思うのに・・・。


「さ、第5回戦するで。」

そう言ってまたコントローラーをいじる亮ちゃん。


「あー・・・わたし今日用事あるし、そろそろ帰るな。用意せなあかん。」

嘘だよ。

用事なんてないよ。

でもこの場にいたらそのうち泣きそうな気がすんねん。


「そうなん?卒業式やし、見回りおるだろうから気つけなあかんで。どこ行くん??」

コントローラーを置きながら言う亮ちゃん。


「カラオケ♪なんか他校の男の子らと友達で卒業パーティーするって言うとった。」


これはほんま。

でも行かんって言うた。

もし・・止めてくれたらなって小さな願いを込めて言うた。

危ないからあかん!!って。


「そうなんや。ハメ外しすぎたらあかんからな。」

そう言ってまたわたしの頭を撫でる。

やっぱり・・・大人になんてわたしはいつまでたってもなれんのかもしれん。

そう思ったら涙がもう我慢の限界をこえた。
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