【短編】12年の想い
「っく・・・。」

唇をかみ締めたけど涙は溢れてしまって・・。


「チョコ!?どうしたん!?」

オロオロとする亮ちゃん。

泣いて迷惑しかかけんのに。

でも止まらん・・・。

ここまできたら言うしかない。


「大人の女に・・いつなれるんやろ?」

亮ちゃんを見上げて言う。

いつになく困った顔しとる。


「大人の女・・?チョコが?」

そう言うからコクンと頷いた。

同時に涙が一粒落ちる。


「チョコはもう・・大人やろ。しっかりしとるし。どうしたん、急に。」

驚いた表情は消えない。

夏と冬が同時に来たというような顔。

大げさやない。

亮ちゃんのこんなに驚いた顔、見たことなかった。


「でも亮ちゃんからしたら・・・妹やん。ずっとこれからもそうやろ?」


「チョコ?何なん?どうしたん??」


わたしの頭に触れようとした。

それをわたしは手で払った。


「触らんといて!!」

そう叫んで。


「卒業したってやっぱり何も変わったりせん。亮ちゃんの目に映るわたしは。もう辛いねん。」

そう下を向きながら言うと亮ちゃんは小さな声で


「大切な妹や。チョコは。」


そう呟いた。

それを聞いて耐え切れずわたしは亮ちゃんの家を飛び出した。

追いかけてくるなんてもちろんなく、誰もいない後ろを見ると更に涙は溢れた。
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