野球ボールと君の夢
「ま、嫌なやつなのは確かだけど。」
落胆した僕に言った言葉。
それは阿部くんの優しさであって
ぼくの力でもある。
「投手としてならおれはお前がすきだよ。」
「す すき…」
あまり意識すると泣き出しそうになったからもう考えるのをやめた。
そのかわりに
「ご ごめんね、俺 投げるよ」
阿部くんは始め、驚いた顔をしたが
すぐ「そうこなくっちゃ」といわんばかりの笑顔を見せた。
でも忘れないでいてほしいな。
俺はただの球威のないピッチャー。
君をがっかりさせることを約束するよ。
だから
「がっかりさせる から、さきあやまっとくね。ごめんね」
と口からこぼれるように阿部君にあやまった。
投げるだけ。
だから1球投げて
さっさと終わろう。
みんなをがっかりさせるのは
1度で十分だ。