君に触れたくて…
「…行くぞ」
俺は伝票を持ち、レジに行く。
「お会計350円です。ありがとうございました」
カフェを出ると、真っ赤に染まった夕日が俺を見ている。
あの日も、こんな綺麗な夕日だった。
「…梨加」
「ん?」
「手、繋ぐか。久しぶりに」
「…うんっ」
夕日を見ながら、俺は梨加との家へ帰る。
俺達の間に、好きだなんて感情はない。
形だけの彼女、彼氏。
傷を埋め合うだけの関係。
そんな、冷めた関係だけど、
今思えば俺は、確かに梨加に愛されてたんだと思う。
冷えた心を、寒い体を、梨加はずっと、温めてくれてた。