君に触れたくて…
歩くのが遅いあたしに、聡くんが歩幅を合わせてくれる。
ふと、理音のことを思い出した。
“お前おっせぇんだよ!”
移動教室の時、そうあたしに言ってたっけ。
でもちゃんとあたしのペースに合わせて、ゆっくり歩いてくれてた。
懐かしいな…
今何してるんだろう。
聡くんなら分かるかな?
でも、聞ける勇気がない。
あたしを大切にしてくれる人に、聞けるはずがない。
第一、聡くんも、理音の話には触れようとしないし…
気使ってくれてるんだよね。
「着いたよ」
そのレストランの外装はすごく可愛いくて、女の子に人気が出そうなレストランだった。