君に触れたくて…
「まじで金いらねぇから」
彼はあたしの元に五百円を返した。
「なんで?」
「俺が無理矢理誘ったんだし。いらない」
この人はあたしがいくら言っても、
お金もらってくれないな…
「じゃあ、ごちになります…」
「どーぞ」
ふわっと笑う彼の笑顔に、あたしはドキッとした。
見た目からは想像できないような、優しい笑顔。
「ねぇ、名前は?」
「え?言ってなかったっけ?」
「うん」
「幸弘」
ゆきひろくんか。
「わかった」
「ゆきって呼んでね」
ふざけて笑うゆき。
「女の子みたい」
あたしもつられて笑ってしまった。
「やっと笑った」
またふわっとした笑顔を見せる。
あたしはこの笑顔に弱いみたいだ。
「え?」
「最近、悲しそうな感じだったから」
「…見てたの?」
「たまにね」