君に触れたくて…
こんな事したって
秋桜を忘れられる訳じゃない。
むしろ幻覚までみる。
なのに………
子供か、俺は。
「ねぇ」
やべぇ。
抱いたままだった。
「ごめんな」
俺はベッドから降り、ズボンを整える。
「珍しいね、理音が途中でやめるなんて」
「先輩」
「なに?」
「何で本当に触れたいやつには、
触れられないんだろ」
「…どうしたの急に」
「いや…なんでもねぇ」
なに言ってんだ、俺。
こんなこと聞いたって、どうしようもならないだろ。
先輩は少し考えて、こう言った。
「多分、その子のことが誰よりも大切だからじゃないかな」
「……大切…」
「愛してるからじゃないの?」
愛?
俺が愛してるって?
愛を知らない俺。
愛し方もわからない俺が
秋桜を愛してる………?