月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
入院が決まりました
「いいですね、向こう半月、果穂里を病院から出してはいけません」
「はい」
和服姿の麻砂女お婆ちゃんが、判決を言い渡す裁判長のように宣言すると、お母さんは殊勝な態度でうなずいた。
「大げさだよ!」
あたし旭果穂里は口を尖らせて抗議した。
「自宅療養で充分だって!」
「いけません」
お婆ちゃんはあたしをキッ、とにらみつけた。
「貴女のようなお転婆は、しばらく大人しく過ごす必要があります」
「一体なんの根拠があって…」
あたしはそう言いかけたが、これ以上はムダだと思い、口をつぐんだ。
司法一家に生まれ育ち、都内のバカでかい家に住む、身内で一番の権力者である麻砂女お婆ちゃんには誰も逆らえない。
『なんでこんな事に…』
心の中で、そうタメ息をついた。
――――――――――
あたしは今、ジャージ姿で病院のベッドにいる。
右足にはギプス。
こんな姿になったきっかけは昨日の放課後。
「はい」
和服姿の麻砂女お婆ちゃんが、判決を言い渡す裁判長のように宣言すると、お母さんは殊勝な態度でうなずいた。
「大げさだよ!」
あたし旭果穂里は口を尖らせて抗議した。
「自宅療養で充分だって!」
「いけません」
お婆ちゃんはあたしをキッ、とにらみつけた。
「貴女のようなお転婆は、しばらく大人しく過ごす必要があります」
「一体なんの根拠があって…」
あたしはそう言いかけたが、これ以上はムダだと思い、口をつぐんだ。
司法一家に生まれ育ち、都内のバカでかい家に住む、身内で一番の権力者である麻砂女お婆ちゃんには誰も逆らえない。
『なんでこんな事に…』
心の中で、そうタメ息をついた。
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あたしは今、ジャージ姿で病院のベッドにいる。
右足にはギプス。
こんな姿になったきっかけは昨日の放課後。
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