月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
ひ、人を呼べって言ってるのにどこ行くのよ!?

「誰か来て下さーい!」

あたしは病棟すべてに響けとばかりに大声を張り上げた。

そして車椅子から立ち上がり松葉杖をつこうとしたが、面倒だったので、杖を小脇に抱えて、片足けんけんで階段を登った。

それでも先に行った看護婦さんに追いついたのは、あたしの運動神経がなせる業か。

屋上に飛び込むと、屋上の柵の手前で、達郎兄ちゃんが和夫さんをはがいじめにしていた。

「離せ!」

和夫さんは大暴れしている。

合気道の有段者である達郎兄ちゃんでさえ持て余している状態だ。

「頼むから死なせてくれー!」

いよいよシャレにならない。

あたしも和夫さんに飛びつこうとしたその時

「やめろ!」

「やめなさい!」

あたしの大声を聞いてやってきたと思われる人たちが、和夫さんと達郎兄ちゃんのもとに駆け寄った。

その中には婦長さんもいた。

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