月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
年頃の乙女にとって、顔は重大な問題だわ。

あたしはその後も鏡を見ながら、笑顔を作ったり、ほっぺたをつねったりし続けた。

あまりに夢中になってたせいだろう。

病室のドアのノックも、そのドアが開いたのにも気づかなかった。

「何やってんだカホ、気色悪い」

ミもフタもない、達郎兄ちゃんの一言だった。

「やだ、いつ来たの達郎兄ちゃん!?」

ほっぺたをつねったまま、あたしは慌てた。

そして達郎兄ちゃんの後ろから現れた人物を見てあたしはさらに慌てた。

「ひゃあ!?」

それは湯月くんだった。

「何だ、ひゃあって」

達郎兄ちゃんは呆れたように言ったが、あたしにも恥じらいってもんがある。

彼氏に鏡を覗き込んでアレコレ顔を作ってるとこを見られて平気なワケがない。

「湯月くん連れてくるんだったら、あらかじめ言ってよ!」

「なんでいちいち言わなきゃならんのだ」

ええい、乙女心ってもんを理解しろ達郎!

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