月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
「それってどういうことなの」

婦長さんの鋭い声が飛んだ。

「まさか、貴方が多江を…」

「直接手をかけたわけじゃありません」

殺したの、という語尾に、和夫さんは否定の言葉をかぶせた。

「ですが僕が殺したようなものです」

「説明して頂けますか」

達郎兄ちゃんが冷静に問い掛けた。

「僕は、真実を話してしまったんです」

震える声で和夫さんが答える。

「真実とは?」

「メールの相手が、僕だと…多江さんのメール相手は兄さんではなく僕だと!」

一瞬、一同が静まり返った。

「何てことを!」

沈黙を破ったのは婦長さんだった。

「多江にとって、唯一の心の支えが政夫さんとのメールだったのに!」

和夫さんの右肩をつかんで激しく揺さぶる。

「あの子に本当のことは言わないでとあれほど言ったのに!」

「僕も言うつもりはなかった!」

和夫さんはうつむきながら叫んだ。

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