月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
「月は出てましたか」

「いえ、それは」

高森さんとそんなやり取りをした後、達郎兄ちゃんは唇を尖らせた。

天気や月がなんだっていうんだろう。

あたしが心の中で首をかしげていると、達郎兄ちゃんは不意に口を開いた。

「付き合って頂けますか、高森さん」

「ひゃ!?」

「なぬぅ!?」

高森さんとあたしは同時に叫んだ。

その声に、鈴木さんが驚いた小動物のような反応をみせる。

「付き合うと言いますと!?」

いきり立つ高森さんに、達郎兄ちゃんは冷静に応じた。

「昨夜の検証をしたいのです」

…あ、なるほど。

そーいう意味ね。

高森さんも意味がわかったらしく、あからさまに落ち込んだ顔をみせた。

だが達郎兄ちゃんが

「予定があるなら後日でも構いませんが」

というと、高森さんは再びいきり立った。

「いえ、付き合わせて頂きます!たとえ急患がいようとも!」

…いやいや、急患がいたらマズいだろ。

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