月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
その誰かは、こちらに向かって身を乗り出している。

高森さんも気付いたようだった。

そんなあたしたちの反応を確かめると、達郎兄ちゃんは携帯を取り出して、電話をかけた。

「手を振ってみてくれ」

電話の相手に、達郎兄ちゃんはそう言った。

すると屋上の人影が動いた。

どうやら手を振っているらしい。

達郎兄ちゃんの電話の相手は、屋上にいる誰かのようだった。

「動いたのはわかりましたか」

達郎兄ちゃんが問いかけると、高森さんはうなずいた。

つられてあたしもうなずく。

「動いたのはわかるんだな」

達郎兄ちゃんはそうつぶやくと、電話の相手に向かって「降りてきてくれ」と言った。

「なに、調べてきたことはどうするんだって?下で聞くよ」

電話の相手とそんなやり取りをすると、達郎兄ちゃんは電話を切った。

「行こうか」

達郎兄ちゃんに促され、病院に入る(あたしの場合は戻る)。

一階の待合室は電気が消され、暗くなっていた。

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