月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
ただ、非常口につながるスペースには明かりが点いており、達郎兄ちゃんはそこへ向かった。

「誰と話してたの」

高森さんに車椅子を押してもらいながら、あたしは訊いた。

「そのうちわかる」

返事になってない答が返ってくる。

どうやらあたしのよく知ってる人間らしい。

やがて明かりのあるスペースについた。

同時に、目と鼻の位置にあったエレベーターが、チンと音をたてて、ロングヘアの女性を吐き出した。

少し茶色がかった黒のパンツスーツ、ショルダーバックを右肩に下げ、ヒールを鳴らしながらあたしたちのところにやってくる。

最近かけ始めたらしい黒縁眼鏡が似合うのは、整った鼻筋と切れ長の目のせいだろう。

美女は足を止めると、あたしたちに向かってにっこりとほほ笑んだ。

「久しぶりね、カホ」

「麗美姉ちゃん!」

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