月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
どうやら今回もこき使われたようである。

「まぁ結局レミは引き受けてくれるんだけどね」

ひょうひょうと言う達郎兄ちゃんに、麗美姉ちゃんは歯をむいた。

「あんたが『カホが泣いてる』とか言うからでしょうに!」

へ?

視線を向けると達郎兄ちゃんは顔をそむけた。

「レミ、それは言うなと言っただろうに」

「あ、あんたが変なこと言うから…」

いやいや、別に泣いたことを麗美姉ちゃんに言ったって怒ったりはしないけどさ。

てか相変わらず天然だなぁ、麗美姉ちゃんは。

やいやい言い合う達郎兄ちゃん&麗美姉ちゃんを見ていると、背中から、ただならぬ気配が伝わってきた。

「旭さん、あの女性(ひと)は誰?」

振り向けばそこには、表情を無くした高森さん。

わ、ほったらかしにしてすみません!

「あの人が麗美姉ちゃんです」

あたしと達郎兄ちゃんの従姉だと伝えた。

「そう…あの人が…」

高森さんは車椅子から手を放した。

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