月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
「ごめんなさい旭さん。失礼してもいいかしら」

「え?」

「用事を思い出したの」

「いや高森さん…」

今夜は特に予定ないって…。

そう思ったあたしだったが、なおもやり合う達郎兄ちゃんと麗美姉ちゃんを見つめる高森さんの表情を見たら何も言えなくなった。

「失礼します」

高森さんは物凄く他人行儀な言い回しをした。

そして立ち去る間際、

「勝てるわけないじゃない、あんな美人…」

というセリフを残していった。

…すいません高森さん。

「あらあの人、帰っちゃったの?」

麗美姉ちゃんは高森さんが姿を消したことに気付いた。

「なんか綺麗な恰好してたけど、パーティーにでも行ったのかしら」

いえ麗美姉ちゃん、貴女は無意識の内に恋敵を葬ったのですよ。

一方、達郎兄ちゃんは素知らぬ顔をしていた。

わぁー、達郎兄ちゃんサイテー。

いい子いい子してもらったことは忘れよーっと。

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