月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
結局、三人そろってあたしの病室に戻ることになった。

面会時間はもうすぐ終わるが「その時はその時」という達郎兄ちゃんの意見が通った。

「でもさ、捜査情報あたしが聞いちゃってもいいのかなぁ」

あたしがベッドに腰かけながら言うと、隣に腰を降ろした麗美姉ちゃんが、何を今さらと言った。

「達郎に捜査情報を提供することだって、特例なのよ?」

そう言って、目の前のパイプ椅子に座った達郎兄ちゃんを指した。

「だって達郎兄ちゃんは民間協力員じゃん」

「いーのよもう。いざとなったら目と耳をふさいでなさい」

わー、適当だなぁ。

「昨夜の藤上医師の行動は?」

達郎兄ちゃんが口を開いた。

「雪村さんを探してたかどうかよね」

麗美姉ちゃんは手帳を取り出した。

「個室の患者たちに訊いたけど、事件当時、藤上医師の姿を目撃した者はいないわ」

「カホは見たか」

あたしは首を振った。

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