月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
…あ、もしかして。

「麗美姉ちゃん、自販機は下だよ」

「大丈夫」

麗美姉ちゃんは缶コーヒーを取り出すと、達郎兄ちゃんに渡した。

缶コーヒーを受け取ったその瞬間、達郎兄ちゃんの瞳に光が宿ったように見えた。

あたしは思った。

『スイッチ入った』

達郎兄ちゃんには変な癖がある。

事件を推理する時、必ず缶コーヒーを手にするのだ。

なんでも初めて事件を解決した時、たまたま缶コーヒーを手にしていたそうで、それ以来癖になっているらしい。

しかしあらかじめ缶コーヒーを用意しておくとは、さすが麗美姉ちゃん。

この2人の間には誰も割り込めないな、多分。

やがて乾いた音がした。

達郎兄ちゃんが缶コーヒーを開けた音だった。

達郎兄ちゃんは缶コーヒーを一口飲むと、小さく息を吐いた。

その瞳はすべてを見通さんとしていた。

達郎兄ちゃんはつぶやいた。

「どうやらこの事件、自殺ではなく他殺のようだな」

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