月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
「どどどどうして!?」

「【ど】が多すぎ」

あたしの頬を麗美姉ちゃんはつついた。

「いやそこはどうでもいいから!」

「そぉ?」

面白がってるな、麗美姉ちゃん。

「まずおかしいのは、多江さんの遺書だ」

あたしたちのやり取りを無視して、達郎兄ちゃんは言った。

【伯母様、長い間お世話になりました。ありがとうございました。先立つ不幸をお許しください】

あの簡潔な遺書の中にどんなおかしな点があったんだろう。

「カホは婦長と多江さんの関係は知ってるよな」

達郎兄ちゃんに訊かれ、あたしはうなずいた。

「多江さんは婦長さんの姪だって…」

「雪村多江の母親が婦長の姉よね」

あたしの答に、麗美姉ちゃんが補足をした。

そういえばそんなことを聞いたような。

でもそれがなんだと言うのか。

「もう一度、遺書の文頭を思い出してみろ。何かおかしな箇所はないか」

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