月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
あたしが首をかしげていると、達郎兄ちゃんはペンとメモ帳を取り出し、メモ帳に何かを書きつけた。

「婦長は多江さんからみたら、母親の妹…つまり【おば】だ」

達郎兄ちゃんはメモ帳をあたしに見せた。

そこには【叔母】と書いてあった。

「【伯母】じゃない?」

「違う。漢字テストの必要ありだな」

おおっと、思い出したような家庭教師モード。

「母親の妹が【叔母】で姉が【伯母】。つまり多江さんは漢字を間違えたことになる」

「それがどう…」

言いかけてハッとなる。

あたしは多江さんがメールの誤字を指摘していたことを思い出した。

しかも多江さんは漢検一級の持ち主だ。

「多江さんが叔母と伯母を間違えるなんてあり得ないってこと?」

「その通り」

達郎兄ちゃんはうなずいた。

「つまり婦長が受け取った遺書は、多江さんが書いたものではない可能性がある」

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