月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
ということは多江さんの死が自殺じゃないってこと…?

「じゃあ他殺だとしたら犯人は誰なの!?」

前のめりになったあたしの肩を、麗美姉ちゃんがつかんだ。

「落ち着きなさいカホ。あんたケガしてるんだから」

そ、そりゃそうだけど早く話を進めてほしいし!

「もし多江さんが誰かに殺されたとしたら…」

あたしの気持ちを知ってか知らずか、達郎兄ちゃんはもったいぶる。

「昨夜それができたのは藤上医師だろうな」

「藤上先生が!?」

「さっき言ったように事件当時の藤上医師のアリバイは存在しない。なぜなら事件当時、藤上医師は屋上にいたからだ。多江さんを屋上から投げ落とすためにな」

…!

その衝撃的な内容に、あたしは息がつまりそうになった。

「ちょっと待って達郎」

麗美姉ちゃんが口を挟んだ。

「投げ落とすって言ったって、物を落とすのとは違うのよ。それにどうやって雪村多江を屋上まで運んだの?」

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