月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
本来の自分…。

「でも多江さんはどうして治ったの」

イェマント氏病は治療法が確立されていない未知の病気。

それが突然治るなんて。

「おそらくは和夫の告白だな」

「和夫さんの告白?」

「多江さんは和夫にメールの相手は自分だという真実を告げられた」

それは和夫さんの口からも明らかになっている。

「和夫がどういう言い方をしたのかは知らないが、多江さんを愛するが故だとか、そんな言い方をしたんだと思う」

まるで見てきたかのような言い方だ。

でも納得してしまいそうになるあたしもいる。

「多江さんはショックを受けただろう。しかしそのショックで、本来の自分を取り戻した」

「なんかびっくりしたらしゃっくりが止まった、みたいな話ね」

麗美姉ちゃん、それはちょっと違うと思う。

一方、達郎兄ちゃんの推理は続く。

「自分のために辛い芝居をさせてすまない。そんな思いが多江さんに本来の自分を取り戻させたんじゃないだろうか」

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