月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
「それともなに、交通事故は車を作った人のせい?すべての犯罪はその犯罪者を生んだ母親のせいなの?」

「麗美姉ちゃ…」

「悪いのはカホじゃなくて、憎き犯罪を起こした犯罪者本人だっつーの!わかった!?」

ああ、優しいんだか厳しいんだかわからない。

「レミ、そのへんにしておけ」

達郎兄ちゃんが麗美姉ちゃんの肩を叩いた。

「チョップはともかく、拳は危険だ」

もし達郎兄ちゃんがいなかったら、あたしは麗美姉ちゃんにぶん殴られていただろう(感謝)。

「でもレミの言う事にも一理ある」

達郎兄ちゃんは言った。

「自分を責めるぐらいだったら、多江さんのために生きないとな、誰かさんのように」

「誰かさん?」

「雪村多江の死んだ恋人の弟って、政夫だっけ」

麗美姉ちゃんの問い掛けにあたしはうなずく。

「わざわざ警察まで押しかけて宣言したのよ。雪村多江の無念を晴らすために裁判の証言台に立つってね」

へぇ…。

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