月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
でも彼女の前でそのリアクションはないだろう。

「ねぇ湯月くん、あたし退院が決まったの」

あたしはとびきりの笑顔で話しかけた。

「え、うん」

退院のことはすでにメールで伝えている。

なぜ今、それをという顔をした湯月くんに向かって、あたしは多江さんからもらったネックレスを掲げた。

「これ、ある人が退院祝いにくれたんだけど、湯月くんは何を持ってきてくれたのかな~」

真っ赤だった湯月くんの顔が、再び真っ青に染まった。

あたしは自分の彼氏が、自分からプレゼントを持ってくるような男の子じゃないってことは、わかっている。

去年のXmasだって

「旭さんの欲しいものを言って下さい!」

と力強くも味気ない事を言ったのだから。

要は、湯月くんに意地悪をしたかったのだ。

「あれれ、どうしたのかな~?」

わなわなと体を震わせる湯月くんに、あたしはたたみかける。

次の瞬間、湯月くんは体を反転させると、病室を飛び出した。

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