月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
そんな状態が3日続き、4日目に自室で倒れているのが発見された。

身内は相談の結果、多江さんをこの病院に入院させることにした。

「多江を引き取った義兄の両親も亡くなっていたし、この病院はあの子の身内みたいなものだから」

「身内、ですか?」

「この病院の創立者は私の祖父なの」

なるほど。

加えて婦長さんもいる。

入院にはうってつけだろう。

「入院といっても、あの子のは心の病。私たちはとにかく、見守ることにしたの」

きちんと栄養をとらせ、規則正しい生活を送らせる。

体が健康であれば、そのうち心も…ということだろう。

治療薬は【時間】というわけだ。

しかし入院してからも、多江さん一か月ほどは抜け殻の状態だった。

変化が起きたのは、それからさらに2週間以上がたったころ。

その日は隆夫さんの四十九日だった。

『隆夫さんからメールが来たの』

多江さんは、それはそれは嬉しそうな顔で言ったという。

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