月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
まずは食えってことだろうな。

なんとなく達郎兄ちゃんの思考が読めるようになってきた。

麗美姉ちゃんの域に達する日も近いかもね。

あたしはプリンとスプーンを取り出すと、残りを紙袋ごと返した。

夕食前なので、食べるのは我慢する。

一方、達郎兄ちゃんはパクパクとやり出した。

甘党探偵は健在だ。

「最愛の人の死を無意識に否定しようとするのは、よくある話だ」

半分ぐらい食べたところで、達郎兄ちゃんは口を開いた。

「昔からミステリーのトリックでもよく使われてる。代表的なとこではヒッチコックの【サイコ】だな」

死んだ人間から手紙が来るので、調べてみたら、自分で無意識に書いて出していたなんて話もあるそうだ。

「最愛の人を亡くしたショックで【夢見がちな性格】になったのかもしれない」

「【夢見がちな性格】って?」

「Fantasy‐pronepersonality」

達郎兄ちゃんは流暢な英語で言った。

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