月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
全然理解できない。

発見した医師の名をとってイェマント氏病というらしい。

世界でも20例ぐらいしか確認されておらず、とても珍しい病気だそうだ。

「いもしない人を認識する病気か…」

あたしは首をかしげた。

「でも、多江さんの場合はメールだよ」

メールは確かに多江さんのもとに届いていた。

幻覚ではない。

「何か手品のようなトリックがあるかもな」

「多江さんが自分でメールを送ってるわけ?」

とてもそんな風には見えなかったけど。

「そう言えば」

達郎兄ちゃんは何か思い出したように言った。

「その女性の名前、なんていったっけ」

「?多江さんよ」

「そうじゃなくて、フルネーム」

なら最初から言えよ。

「雪村多江よ」

「雪村多江…現在入院中か…」

達郎兄ちゃんはまた唇を尖らせた。

「どうしたの」

「もしかしたら知ってる人間かもしれない」

「え?」

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