月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
「こんにちは」

多江さんはプライスレスな微笑みを返した。

その手には携帯。

またメールしに来たんだろうか。

死んだはずの『彼』と。

「そちらの方は」

多江さんは達郎兄ちゃんを見た。

「月見達郎です。コイツの従兄です」

コイツって言うなっ。

あたしを指す人さし指に、思わずかみつきそうになった。

「はじめましてではないですよね」

達郎兄ちゃんは多江さんに問い掛けた。

多江さんは記憶を探る様に、達郎兄ちゃんの顔を見ている。

『知ってる人間かもしれない』

昨日、達郎兄ちゃんはそう言った。

2人は知り合いなのか。

だとしたらどんな関係だ?

あたしの好奇心がむくむくと頭をもたげてきたその時。

「Love☆スイーツ」

達郎兄ちゃんの口から、聞き慣れない単語が出てきた。

なんだ『Love☆スイーツ』って。

「ああ!」

多江さんの顔がパッと明るくなる。

「R大学のスイーツ愛好会の方でしたか!」

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