月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
あたしに対してひとしきりお説教した後、冒頭の宣言をしたのであった。

「まったく、嫁入り前の娘が外で怪我をこしらえるなんて…」

「別に悪いことしたワケじゃないよぉー」

むしろホメてもらいたいぐらいだ。

「人を心配させといて、どこが良い事ですか!」

う。

そう言われると何も言えない。

「果穂里が事故に遭ったと聞いた時は生きた心地がしませんでしたよ」

お婆ちゃんは着物のたもとで目をぬぐった。

「可愛い孫がいなくなると思ったら涙が止まらなくて…」

「孫なら果穂里以外にもいますよ」

「だまらっしゃい!」

すっとぼけた事をぬかして、お婆ちゃんに怒鳴りつけられたのは達郎兄ちゃんだ。

「私が言ったのは【可愛い】孫です!常識のネジが一本抜けたような孫ではありません!」

「誰がネジ一本抜けた孫ですか」

「訊く必要ないでしょう!」

「あ、僕の事ですか」

達郎兄ちゃんは飄々と言った。

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