月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
和夫さんの手の中にも携帯があったのである。

なんで携帯を手にしてるんだろ?

そう思った時、サブディスプレイが光った。

同時にかすかな振動音。

着信があったらしい。

和夫さんはあたしの方をチラッと見てから、携帯を開いた。

どうやらメールが来たらしい。

和夫さんは数秒、画面に目を落とした。

「そういやアレ、どうしたの」

携帯のボタンを押しながら和夫さんは言った。

「アレって?」

「兄さんが買えばいいって言ったアクセサリーの話」

「あ、そのことね」

昨日、達郎兄ちゃんと一緒に見たメールの事だ。

「もう注文したわ。今週中には届くと思うけど」

確か通販だったよね。

病室に届くのかしら。

などと考えていると、今度は多江さんの携帯がメロディを奏でた。

隆夫さん(?)からの返事が届いたらしい。

嬉しそうに携帯を開く多江さん。

一方で、和夫さんは既に携帯を閉じていた。


―――――――――――


「…で?」

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