月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
「兄になりすましてるってワケか」

「その通り!」

本日2回目だ。

「まるでドラマみたいな話だな」

「ドラマでもベタでも何でもいいわよ」

「女の勘ってやつか」

「そうよ!」

「レミみたいなこと言うんだな」

あ、麗美姉ちゃんを引き合いに出した。

んとに、達郎兄ちゃんてば無意識にそういうこと言うんだから。

「…解せない事がある」

達郎兄ちゃんは唇を尖らせた。

「解せないこと?」

「多江さんがメールを打つ和夫さんに無関心だって事だ」

和夫さんは10回以上メールを打ったんだよな、と達郎兄ちゃんは訊いてきた。

「会話の最中に目の前で何回もメール打たれりゃ気になるのが普通じゃないか?」

達郎兄ちゃんは再び唇を尖らせる。

「初対面のカホはともかく、多江さんなら見とがめてもおかしくない」

「そう言われればそうだけど…でも隆夫さんになりすましてメール打つなら、目の前でメール打つしかないじゃない」

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