月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
メール打つたびに外に出るわけにもいかないし。

「でも、なりすましてるなら、こっそりメール打つのが筋なのに、和夫さんは堂々としてる。そこが気になるのさ」

うーん、達郎兄ちゃんの言い分にも一理ある。

あたしの頭の中に?マークが大量に浮かびはじめた。

「こういうのどうだ」

窓の外の雨模様を眺めながら、達郎兄ちゃんが口を開いた。

「多江さんと和夫さんはグルなんだ」

「グル?」

「2人で隆夫さんからメールが来てるように装ってるのさ」

「何のために?」

「周囲を欺いて笑うためさ」

「いたずらってこと?」

「そうだ」

「あり得ないっしょ!」

何をバカなことを。

あたしは声を荒げた。

和夫さんは今日が初対面だけど、多江さんはとてもそんなことするような人とは思えない。

「だいたいがそんなことするのに何の意味があるの?」

「さぁ」

自分から言い出しておいて、達郎兄ちゃんは首を振った。

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