月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
「ただカホの言うように、メールの送り主が和夫さんだとしたら、単純な話じゃ済まないかもな」

雨を眺めながら達郎兄ちゃんは言った。

その言葉が、あたしの胸にちくりと刺さる。

達郎兄ちゃんは名探偵。

あたしと違って勘で物を言わない。

そしてその推理はよく当たる。

だからとても気になる。

たまらずあたしはうつむいた。

「カホ」

達郎兄ちゃんの声に顔をあげる。

「ごめんな」

達郎兄ちゃんがあたしを見ていた。

「お前を不安にさせるつもりはなかったんだが」

「ううん」

あたしは首を振った。

達郎兄ちゃんはなんにも悪くない。

「それなら良かった。あと、今日も勉強も教えられなかったな。すまん」

いえ、それはそっちの方がありがたいですから。

「とりあえずはあたしなりに注意してみるよ」

「そうだな」

あたしたちがうなずいたその時。

「夕食ですよー」

抜群のタイミングで、食事係のおばさんが入ってきた。

< 61 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop