月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
翌日には雨もあがり、青空が広がった。

朝イチにお母さんが大量の荷物(主に着替え)を持って訪ねてくると、これまた大量の荷物(主に洗濯物)を持って出て行った。

「ごめんね、また時間あったら来るから」

病室を出る時、お母さんはすまなそうに言った。

「別にいいよ、無理しなくて」

お母さんは某デパートの現場主任。

超のつくほど忙しい身だから、来てくれるだけでもありがたい。

「お父さんも心配してたけど、仕事で来れないって…」

「ロサンゼルスからじゃ無理でしょ!」

あたしのお父さんは外資系企業の駐在員で、今はアメリカにいる。

心配してもらうだけで充分だ。

お母さんが帰ると、あたしは湯月くんが置いていったプリントを手に取った。

あの日から湯月くんは来ていない。

『オレの方からも話してみる』

達郎兄ちゃんはそう言ってくれたけど…。

やっぱ連絡した方がいいよね…。

あたしは携帯を手に取った。

< 62 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop