月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
いつものように松葉杖をついて、屋上へ上がる。

ドアを開けて思った。

あたしは結局この人と縁があるらしい。

「こんにちは」

ベンチに座っていた多江さんが頭を下げた。

「こんにちは」

あたしも会釈を返す。

多江さんの隣には、今日も和夫さんがいた。

和夫さんは立ち上がると、あたしに席を譲ってくれた。

「隆夫さんとメールですか」

腰掛けながら、多江さんの手にある携帯を見る。

「そうよ」

嬉しそうな笑顔はいつもと同じ。

本当に隆夫さんのことが好きなんだな。

でも、そのメールの相手は…。

「なんか最近、和夫さんの話題が多くて」

「へぇ…」

あたしが視線を向けると和夫さんはあわてたように顔をそむけた。

その手には携帯。

絶対にあやしい。

グルだっていう達郎兄ちゃんの案は、あたしの中で却下となった。

「じゃ、返事書くわね」

メールを打ちはじめた多江さんを、和夫さんは笑顔で見つめた。

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