月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
お婆ちゃんはビシッと言った。

なら入院させんなよと思ったが、言ったところでムダだろう。

「達郎が家庭教師として来ても支障がないよう、病院に頼んで個室にしてもらったんですからね」

何でもこの病院の経営者とは知人だそうだ。

まったく、そうまでして入院さすなよ…。

「どうしましたか、達郎?」

お婆ちゃんの言葉を受けて見ると、達郎兄ちゃんは腕組みをして何か考え事をしてるようだった。

「何か不満でもあるんですか、達郎」

「不満はありません」

達郎兄ちゃんは真面目な顔で言った。

「ただ病室に来る場合も家庭教師という言葉を使うのかな、と思いまして…」

「そんな事は貴方が好きに考えればよろしい」

的確すぎる、お婆ちゃんのツッコミだった。

「何にせよ、引き受けてくれますね」

「構いませんよ」

達郎兄ちゃんはうなずいた。

「もう三回生ですから、そんなに講義もないですし」

達郎兄ちゃんは高校卒業後4年間海外留学した。

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