月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
「どうしてだ」

そう訊かれたが、首を振った。

「わかんない」

わかってたら、こんなにムカムカしてない。

「わからないのか」

達郎兄ちゃんは頭をかいた。

ちょっと呆れたような仕草だ。

「なによ、達郎兄ちゃんにはわかるっていうの」

「まぁな」

「じゃあ言ってよ」

「言ったところで、たぶんカホは認めない」

認めない?

訝るあたしをよそに、達郎兄ちゃんはイスから立ち上がった。

「今日も勉強つぶれちまったな」

独り言のように言って、あたしの方を向いた。

「カホ」

「なーに」

「人はそれぞれだ。どういう行動をとるかはその人の自由だ」

は?

「なにソレ?」

「くれぐれも短気は起こすなよ」

達郎兄ちゃんはそう言うと、病室のドアへと向かった。

「ちょっと達郎兄ちゃん、意味わかんないんだけど」

説明してけっ。

そう言葉を続けようとした時、ドアが開いた。

「夕食ですよー」

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