月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
そこは見舞い客らが使用する喫茶室。

つまり話があると言いたいわけだ。

「いいですよ」

あたしも訊きたいことがあったのでうなずいた。

いちごオレとポッキー、人質ならぬ物質にとられてる(?)しね。

「すまないね」

そう促す和夫さんに、あたしは松葉杖をつきながらついていった。

喫茶室には、ほとんど人はいなかった。

「今日はお休みなんですか」

あたしは曜日の感覚のズレを直すために眺めた、カレンダーの日付を思い出しながら言った。

「今日の授業は、夕方だけなんだ」

大学生はわりとヒマって達郎兄ちゃん言ってたけど、本当かも。

「今日も多江さんのお見舞いですか」

そう訊くと、和夫さんは苦笑とも照れ笑いともとれる笑みを浮かべた。

きっと隆夫さんになりすまして、メールしてたんだろうな。

「昨日のことだけど…」

念を押す和夫さんに、あたしはうなずいた。

「わかってます。他の人に話すつもりは、ありません」

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