月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
「そうなの?」

なんか本気っぽかったけどなぁ。

「次の日に電話かけてきて、退院時期はお医者様に任せるって言ったんだもの」

察するに、一晩で冷静になったんだろうな。

でもそれおばあちゃんに言ったら怒られそうだから、黙っとこ。

「で、退院はいつなの」

「××日よ」

カレンダーを見た。

「3日後か」

「そうよ。あんた、お世話になった人がいたら、挨拶してきなさい」

「お世話になった人?」

「知り合いができたみたいだって、達郎君が言ってたけど」

多江さんのことか。

てか達郎兄ちゃん、あたしのことお母さんに報告してたんだ。

いや、達郎兄ちゃんのことだから、訊かれたことだけに答えてるんだと思うけど。

「余計なこと言ってなきゃいいけど…」

「なにブツクサ言ってるの」

「あ、何でもない」

あたしはあわてて首を振った。


―――――――――――


そうか、退院か。

お母さんが帰った後、あたしは考えた。

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